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妖精と伯爵

略称:― 作品形態:漫画
傾向:暴力表現、悲劇
関連作品:毒羽根の侯爵

あらすじ

美しくか弱い怪物『妖精』が美術品として売買され、乱獲された時代。
深い森で人間を知らずに暮らしていた妖精イリスも、ある日、密猟者に襲撃され売却された。襲撃の際に右目と右足を失ったイリスの末路はあわや解体されアクセサリーの材料か…と思われた折、イリスの購入に名乗りを上げたのは若き領主ラムルレス伯爵。
紳士的な伯爵の態度に一度は安堵したイリスだったが、伯爵に薬を盛られ、次に目覚めた時には両腕と左足を失っていた。
「美しい姿になったね」
伯爵はあくまで優しく微笑む。
「イリス、君は私の手掛けた芸術の中でも最高の作品になるよ」

【ネタバレ】 四肢を失い、心を閉ざした妖精イリス。
そんなイリスの胸中など一切無視し、伯爵はイリスを美しく保ち、美術作品として事あるごとに自慢した。しかし哀れなイリスの姿に、鑑賞者の多くは眉をひそめる。
それでも伯爵は毎日イリスの美しさを讃えた。彼はイリスの美を心から信じており、そしていつか自分の芸術が世間に受け入れられることを望んでいた。最初は悪魔的な人間に思えた彼に邪悪な心は一切なく、ただ孤独な世界を抱えた脆弱な人間であることをイリスは少しずつ理解していく。
次第に伯爵の孤独に同情を示すようになったイリスに、伯爵もイリスに対して『美』以外の価値を見い出していった。
「私に、あなたを抱き締めることのできる腕が残っていたら良かったのに」
「私は、君の腕を切り落とすべきではなかった……」
ある夜、イリスのもとにラムルレス伯爵家の家令がやってきた。
ギルフォード・ラムルレスが自ら命を絶ったとの報せだった。
「旦那様の遺言により、旦那様の四肢と右眼、そして遺産のすべてを、あなたに」

伯爵の四肢を得、四肢を失った伯爵の亡骸を初めて抱き締めるイリス。
これはラルムレス伯領、妖精郷アルカンシエルの誕生にまつわる、哀しい物語。

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主な登場人物

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